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2009年10月 アーカイブ

2009年10月 9日

このごろ思うこと

・先日ある人から聞いた話である。小学校で運動会があったが、新インフルエンザ対策のため、 子ども達は教室でお弁当を食べ、父母達は校庭や近隣の公園等で食べたそうである。教室で  食べた子どもの中に、菓子パンを持って来ていた子どもがいたそうである。菓子パンがいけないというわけではないが、運動会や遠足は子どもにとって特別な日である。何か事情があったかもしれないが、お母さんの手作りのお弁当を持たせることができなかったのかと、淋しく思った。これに関して、今から20年位前の話であるが、ペスタロッチー研究会である小学校の校長先生が、運動会で「ほっかほっか弁当」を持って来ていた子どもがかなりいたとこぼしていらっしゃった。
 私が中学生の時、家庭科の宿題でお弁当を自分で作り、その絵を描いて提出する課題が出た。勿論、栄養のバランスや彩りも考え工夫したのであるが、楽しい課題であった。当時は女子生徒だけであったが、現在男子生徒も対象にしていいと思う。
 私の子ども時代、母親や姉がよくのり弁を作ってくれた。おかずが少ない時は、のりを二段にしてくれた。礒の香がお弁当全体に浸透していたことを思い出す。

・幼稚園教育要領の改訂が昨年3月末に告示され、今年の4月1日より施行された。改訂された中で、私の気を惹いたのは、食育と家族を大切にすることである。食育では先生や友達と食べることを楽しむこと、また家族の絆では親や祖父母等の家族の愛情に気付き、家族を大切にする気持ちが育つようにすることである。現在、孤食や個食、固食が多く、家族の団欒の時間が少ないから、これらのことが導入されたのであろう。

・最近、高脂血症が気になり、最寄のクリニックで検査を受けた。初めてかかったお医者さんであるが、患者の話をよく聞き、余計な検査はしない良心的なお医者さんである。大病院で何時間も待たされ、過剰な検査や薬づけされることなく、短時間で的確な診察を受けることができた。こんなお医者さんばかりだといいが。
 

2009年10月23日

特別シンポジウムー大学教育への問いとその将来を考えるーに出席して(1)

 去る7月25日、文科省で質保証の全体像を探るのシンポジウムがあった。参加申し込みをしたが、参加者多数の場合、抽選とあったので半ば諦めていたところ、幸運にも聴講券が送られてきた。当日、会場は600名の出席者で、満席であった。
 東大名誉教授天野郁夫先生の基調講演に続いて、五人の先生の発表と質疑応答があった。
 ここで、天野先生の基調講演「大学改革の20年と質保証問題」を紹介したい。
 大学には施設設備、教員、学生、教育課程があり、それぞれが一定の水準を保っていなければならない。これが質の保証の問題である。この質の保証に一番重要な役割を期待されているのは、大学の教員である。質の保証をするのは国家であるが、大学設置基準と大学入学者の選抜は質の保証の装置である。この二つの装置への依存度がこれまで極めて高かった。しかし、この20年の間に質的変化を遂げてきた。それは、設置基準の緩和と入学者の学力低下の問題である。
 設置基準の緩和と引き換えに、事後チェックとしての新しい質保証の装置が登場してきた。それは評価システムで、質の保証はそれぞれの大学が自主的に行うべきものである。大学は自己点検評価をきちんとし、その上で第三者の評価を受けるようにということであったが、やがて第三者評価が義務付けられる。この第三者評価の機関として、「認証評価機関」が作られるようになった。この評価システムが第三の質保証の装置になりつつある。
 また、大学入学試験については、選抜の方法が多様化の方向を辿ることになった。調査書重視で、推薦入学制の枠を広げたり,AO入試という形で、多様化が広がっていった。しかし、90年代の末頃から入学してくる学生の基礎学力の不足に悩む大学が増えてきた。
 高校教育への疑問が強まり、基礎学力の低下に大学側が憂慮するようになる。選抜方法について推薦入試やAO入試の見直し、また高大接続テストの問題も浮上してきている。反省的な傾向が出てきたが、それだけでは問題に対応できない。入学後の教育が重要だという話になってきた。
 こうした認識から、第四の質の保証装置が登場してくる。即ち、教育過程(教育プロセス)である。これこそ最も重要な保証装置である。日常の教育活動、教育重視の体制作りが不可欠であり、それは教員集団だけが果たしうる役割でもある。それは質保証の中核的装置であり、それを支援する装置として他の三つの装置があるという認識を我々は持つべきではないかと、天野先生はしめくくられた。
 天野先生の講演は、かつて大学問題に取り組んでいた私にとって大変興味深い内容であった。

2009年10月29日

特別シンポジウムー大学教育への問いとその将来を考えるーに出席して(2)

 前回の続きであるが、パネリストの発表や質疑応答で特に私の印象に残った事を記す。
 独立行政法人大学入試センター教授 荒井克弘先生は「高大接続と大学の『質保証』の観点から」を発表された。かつて大学は学力のある学生を入学させたが、現実は高校全入、大学全入により、教育課程の接続が出来なくなった。中学も含めて、高校、大学教育の内容の連携を図ることを主張された。先生は大学の教員が高校の教員ともっと対話すべきであることを強調された。
 広島大学准教授 小方直幸先生は「大学教育と学習成果の観点から」を発表された。多くの学生は問題意識も無く入学してくる。消極的な学生には学習の到達度を示し、積極的に学習させる必要がある。学生はグループ学習や発表できる参加型教育に関心がある。発表の中で、卒業生から見た学習成果の評価が興味を惹いた。
 国立教育政策研究所総括研究官 川島敬二先生は「大学教員の『質』を考える」を発表された。教員が持つべき能力の内容を定義して共有し、基本的枠組みに基づいて教員の職能開発プログラムを作成していくようなプロセスが必要である。
 国際基督教大学教授 北原和夫先生は「学びの本質的意義、分野別質保証の検討の中から」を発表された。21世紀のグローバルな問題に取り組むには、協働する知性が大切である。即ち、課題に挑戦する戦略、作法、想像力、コミュニケーション等である。カリキュラム開発のための参照基準を作成することが必要である。また、先生は理工学部の学生は文科系の科目を勉強すべきであると主張された。
 文部科学省高等教育政策室長 榎本剛先生は「設置基準などの質保証システムの見直し」について発表された。先生の発表で日本の大学は外国人留学生と外国人教師が少ない以外は外国の大学と比べて劣ってはいないということが印象深かった。
 最も興味を惹いたのは、天野先生への質疑応答の中で、大学の学業成績を重視しない早期の就職活動、採用のあり方が及ぼす悪影響である。これに対しては、教育の成果が最も問われているのは職業との関係であるということである。企業が教育の成果をどう評価しているのか。学生の就職活動の時期を繰り上げて、教育や学習の成果が出ていない段階で、内定を出すというのでは質の保証はなされない。企業の人事政策も重要な質の保証の一つである。
 以上、大変有意義なシンポジウムであった。大学教員の一人として、質保証のため教員の連携の必要を強く感じたのである。

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