去る7月25日、文科省で質保証の全体像を探るのシンポジウムがあった。参加申し込みをしたが、参加者多数の場合、抽選とあったので半ば諦めていたところ、幸運にも聴講券が送られてきた。当日、会場は600名の出席者で、満席であった。
東大名誉教授天野郁夫先生の基調講演に続いて、五人の先生の発表と質疑応答があった。
ここで、天野先生の基調講演「大学改革の20年と質保証問題」を紹介したい。
大学には施設設備、教員、学生、教育課程があり、それぞれが一定の水準を保っていなければならない。これが質の保証の問題である。この質の保証に一番重要な役割を期待されているのは、大学の教員である。質の保証をするのは国家であるが、大学設置基準と大学入学者の選抜は質の保証の装置である。この二つの装置への依存度がこれまで極めて高かった。しかし、この20年の間に質的変化を遂げてきた。それは、設置基準の緩和と入学者の学力低下の問題である。
設置基準の緩和と引き換えに、事後チェックとしての新しい質保証の装置が登場してきた。それは評価システムで、質の保証はそれぞれの大学が自主的に行うべきものである。大学は自己点検評価をきちんとし、その上で第三者の評価を受けるようにということであったが、やがて第三者評価が義務付けられる。この第三者評価の機関として、「認証評価機関」が作られるようになった。この評価システムが第三の質保証の装置になりつつある。
また、大学入学試験については、選抜の方法が多様化の方向を辿ることになった。調査書重視で、推薦入学制の枠を広げたり,AO入試という形で、多様化が広がっていった。しかし、90年代の末頃から入学してくる学生の基礎学力の不足に悩む大学が増えてきた。
高校教育への疑問が強まり、基礎学力の低下に大学側が憂慮するようになる。選抜方法について推薦入試やAO入試の見直し、また高大接続テストの問題も浮上してきている。反省的な傾向が出てきたが、それだけでは問題に対応できない。入学後の教育が重要だという話になってきた。
こうした認識から、第四の質の保証装置が登場してくる。即ち、教育過程(教育プロセス)である。これこそ最も重要な保証装置である。日常の教育活動、教育重視の体制作りが不可欠であり、それは教員集団だけが果たしうる役割でもある。それは質保証の中核的装置であり、それを支援する装置として他の三つの装置があるという認識を我々は持つべきではないかと、天野先生はしめくくられた。
天野先生の講演は、かつて大学問題に取り組んでいた私にとって大変興味深い内容であった。