2007年4月アーカイブ

 以前、このブログでご紹介した、全10巻のシリーズ「アメリカの財政と福祉国家」がすべて刊行されました。全10巻の書名は、以下に示す通りです。


 日本経済評論社から刊行されたこのシリーズ本は、渋谷博史東京大学教授が監修され、30人以上のアメリカ財政研究者がお互いに議論を戦わせながら、ようやく全巻が刊行されたものです。私自身も、第2巻では第4章と第5章を、第6巻では第2章を、執筆担当させていただきました。

 このシリーズ全10巻は、渋谷先生を中心として、わが国のアメリカ財政研究者が集結して刊行した大作で、連邦財政、州・地方財政をはじめ、教育、福祉、医療の各分野について事例分析を試みながら実証的に分析したもの。最新のアメリカ財政の現状や課題を盛り込み、インターネットでは入手できない議会資料等も解析しながら議論を深めている。

 私の担当科目「財政学概論演習」や「地域開発・都市経営概論演習」を履修された方、又は現在履修されている方、恐縮ながら、参考書として推薦させていただきます。

 第1巻『アメリカの連邦財政』
 第2巻『アメリカの州・地方財政』 (塙、第4章、第5章を担当)
 第3巻『アメリカの年金と医療』
 第4巻『アメリカの貧困と福祉』
 第5巻『アメリカの財政再建と予算過程』
 第6巻『アメリカの州・地方債』  (塙、第2章を担当)
 第7巻『アメリカの民間医療保険』
 第8巻『アメリカの芸術文化政策』
 第9巻『アメリカの福祉改革』
 第10巻『アメリカ福祉の民間化』

身の引き締まる思いです。

アメリカの生涯学習 

 先月のアメリカ出張ではワシントンやシカゴを訪問したが、シカゴでは、シカゴ市が設置運営するコミュニティカレッジを訪問し、最近のアメリカの成人教育、職業教育、継続教育の現場を見てきた。


(シカゴ市立マルコムエックスカレッジのエントランス)
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 アメリカの初等中等教育、高等教育は専門研究分野の一つであるが、今回訪問したコミュニティカレッジは、その両者をカバーする教育機能を果たしている点で、非常に興味深い。アメリカの教育政策や教育改革を見る眼は、一元的ではないが、1990年代以後は、特に経済的自立を促す政策へと全体的に移行してきている。それは、クリントン政権期の1996年福祉改革が断行されたことで、貧困層を含めて自助努力を促す福祉政策が公平であり、健全であるとの認識の高まりであり、その認識が教育政策にも反映されている。

 これらの判断のすべては州による。福祉改革では、州の福祉給付の権限を一層強化し、とにかく州が独自に貧困層の経済的自立(Welfare to Work)を促すプログラムを構築し、運用している。イリノイ州を含む中西部は民主党的なリベラルな政治土壌で知られるが、それでも個々人の自助努力を促す福祉給付の方向に舵取りされている。

 実はコミュニティカレッジは、その自助努力、つまり就労促進を実現する職業教育等を提供する、最も重要な教育機関と化している。今回コミュニティカレッジを訪問、調査した理由はそこにある。


(カレッジ内1階のコンピューティング室。学生は宿題をやっている)
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 成人教育学部学部長と30分ほどディスカッションをしたが、彼曰く、今後は一層、アメリカ社会では経済のグローバル化に伴い、意欲のある人間と、そうでない人間との差が、そのまま経済格差となって、都市部の貧困など内政問題が先鋭化するであろう、とのことであった。


(図書館の様子)
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(学食の様子。向こうに座っているのは看護師資格取得を目指す学生。20代~30代女性が中心。)
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アメリカのコミュニティカレッジでの教育プログラムは、福祉や貧困という経済問題とのリンケージを一層強めている。そうした貧困対策も視野に入れた都市部のパターンと、例えば北東部州のある富裕地域で視察したような、豊かな財源を最先端IT教育機器の購入に当てた初等中等教育パターンとは、まさに対照的であり、つくづくアメリカの教育は多様であると感じた。

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