2011年3月アーカイブ


「塙武郎の研究室便り」ブログも開設から5年が経ちましたが、今回は、過去最大のサプライズをお知らせすることになりました。

その日、私はイーストハーレムにある公立小学校を訪問し、スミス校長先生とのディスカッションをしていました。すると、校長先生が「今ちょうどある有名な先生が授業に来たから紹介してあげる」と言い出したのです。


その有名な先生とは・・・・。


そう言えば、NYのマンハッタンは数多くの映画の舞台になっています。その中でも今回の研究調査テーマに関わるものがあります。

それは、映画『ミュージック・オブ・ハート』です。主演は、女優のメリル・ストリープ(2000年アカデミー賞受賞)。

この『ミュージック・オブ・ハート』という映画は、実話です。
NYマンハッタンのイーストハーレム地区(貧困地区)の公立学校でバイオリンの音楽教員を勤める女性が音楽を通じて生徒達に希望を与えるという実話です。主演女優メリル・ストリープが演じるのはバイオリンの音楽教員、ロベルタ・ガスパーリ先生です。


なんと、校長先生が私に紹介してくれる有名人とは、このロベルタ先生です!


校長室から廊下に出ると、目の前にロベルタ先生が立ってます。コーディネータの補助教員が私のことをロベルタ先生に伝えてくれていたようで、ロベルタ先生の方から気さくに"Hello! Nice to meet you."と言って、拍手を求めてくださいました。

アメリカ研究してて良かった。
感動の瞬間でした。


校長先生とロベルタ先生が、授業の様子を見学させてくれるというので、さっそくロベルタ先生と一緒に音楽教室へ移動。授業が始まりました。
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バイオリンや音楽と言うよりも、「規律」を教えているように感じました。
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恥ずかしながら、ロベルタ先生と生徒達と一緒に。
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とにかく気さくな方でした。
ロベルタ先生の教育方針は、「自尊心」(self-confidence)を磨くこと、だそうです。


前のブログでも書きましたが、2月27日から研究調査でニューヨークに来ています。

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今回の調査研究テーマは、「アメリカ大都市学校区の債券発行と証券市場との関係」ですが、その基礎的な調査として、ニューヨーク市内の公立学校での資本改善事業計画(Capital Improvement Projects)の実施状況調査、ヒアリングです。この他にも、学校区の財務部での資料収集もあります。

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(写真: 今回の調査対象の一つ、セントラル・パーク・イースト公立学校。)


アメリカの地方財政、とくに教育財政は学校区ごとの地方分権的な仕組みをベースとしている
ので、学校区の自立と自律には目を見張るものがあります。学校区の財務部の担当者はみな、専門的な知識と責任を積極的にテイクしようとする姿勢があります。

ですから、ディスカッションすると必ず最後に担当者は個人の意見を熱心に語ります。そしてその専門的な知識を納税者に平易に説明し、資本事業計画や債券発行の決議(resolution)に導く努力をします。


ところが、自立と自律の志しとは無関係に、経済不況や財政難が襲ってきます。人間は、様々なクライシスに対して専門知識と経験をもって対処しますが、しかし人間の知識や経験だけではグローバル化した経済不況に伴う財政難を食い止めるのは容易ではありません。

そこで、学校区は自主財源以外に外部から財源を調達します。債券発行は、その主要な手段となっていますが、しかしこの証券市場こそ誠にグルーバル化した存在であって、一連のサブプライムローン問題では、基金を州に預けて運用を行っていた学校区が州の判断によって資金凍結にあい教員給与が支払えないという事態が起きました。

この時は、学校区は急遽、地元の地域金融から借入れて教員給与を支払ったとの報告書を読みました。それ以後、学校区は疑心暗鬼になっています。ここNYはそうしたサブプライムローン問題の震源地であったゆえに、新たな対応策も実践されています。

それが、NPO等と公立学校との「公民パートナーシップ」による財源調達です。これは、公立学校での音楽、美術、ダンス、演劇など芸術科目で急速に進んでいます。今回の研究調査でも、「公民パートナーシップ」に注目しています。

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(写真: 「公民パートナーシップ」で設置されたことを示すボード)


私は以前、学校区による債券発行、証券市場との緊張関係について、2007年の論文「シカゴ市学校区の債券発行の枠組み」(渋谷博史・秋山義則・前田高志編『アメリカの州・地方債』日本経済評論社)を著しました。

同論文の執筆時に、やはり証券市場だけでは財源不足を補完しきれない部分があるという現実を十分知っていましたが、ひとまず考察から捨象しました。証券市場から信用を得られない、自主財源に乏しい学校区はどうしているのか、という問題意識です。

「公民パートナーシップ」は結局、民間寄付金(企業、個人)を得たNPOが政府部門(ここでは公立学校)に様々な形で資金提供して資本改善事業をサポートすることです。

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(写真: パートナーシップを得て建設した校舎横に設置されたグラウンドの様子)


皮肉にも、NYの公立学校に公民パートナーシップを進めざるを得ないのは、それだけ教育を取り巻く財政難が深刻であるからです。昨日の地元テレビ番組でも、次年度の公立学校の特殊教育(special education)の予算削減のニュースが報じられました。

2008年の夏、研究調査でニューヨークを訪問してから2年半ほど経ちました。現在2011年3月初旬、再び研究調査でニューヨークに来ています。

NYに着いたその翌日からすでに10か所以上のアポイントメントをこなしています。今日もNY北部郊外にある地域、White PlainsというNY有数の富裕地域へ行きます。

さて、NYマンハッタンのど真ん中といってよいグランドセントラル駅近くのアパートメントホテルに宿泊しておりますが、このグランドセントラル駅は、「グローバルな世界」です。人種、民族、職業、学歴、言語、居住区、そして所得のあらゆる面で多様な人々が利用する場所です。もちろん観光客もいます。

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私は講義で学生に、「NYグランドセントラル駅へ行く機会があれば、そこに30分間黙って通行人の様子を見てごらん。」と言ったことがありますが、気がつけば、つい自分がその行動をしていました。

通行人の中で、最も目立った動きの一つが、Metro-Northと呼ばれるNY北部郊外へ路線を張り巡らせる列車に乗り込もうとする人々です。Metro-Northはいわゆる大都市NYの公共交通システムを担うもので、その乗客の多くは北部の比較的富裕な地域に住む白人層です。夕方6時前、足早にトラック(プラットフォームのこと)へ向かう彼らの姿に目を引きます。この中には、あのWall Streetで働くブローカーもいることでしょう。

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グローバル社会「グランドセントラル駅」に身を置きながら、色々と想像しつつ、写真を撮ってみました。

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