教育基本法を開くと、「学校教育」「社会教育」「家庭教育」の3本柱が列記されている。では、「こどもへの教育のうち、どこからが学校教育の領分で、どこまでが家庭の分担範囲だろうか」と考える。
この1年は、この境目が移動したり薄くなったり、超えたりする事件や事象の多い一年であった。
1月24日に発生した児童虐待による暴行死事件で、学校が家庭での虐待を察知しながらも阻止できなかったことが糾弾されている。平成16年改正の児童虐待防止法により、学校の先生は「虐待の早期発見」に努める義務が課せられ、家庭教育やその結果を監視しせざるを得なくなったが、改めて1月26日付で厚生労働省・文部科学省連名で、徹底を図るよう全国に通知された。
一昔前の「家庭教育」と「学校教育」の線引きの話題は、「『ホームワーク(宿題)』は学校教育か家庭の責任分か?」「障害児教育の分野では、先生が各家庭を週二回程度訪れて保護者も参加する状況で行われる『訪問教育』が実績をあげているが、この学習の線引きはどうなの?」といった言葉遊び的な議論であったが、この1年は「家庭教育のあり方」さえ問われかねない激動を感じる。
平成21年3月に七生養護事件(七生養護学校での「こころとからだの体験学習」という性教育手法が「児童生徒に過激で有害だ」と都教委に大量処分された事件)の判決が確定し、全国の特別支援教育学校で手厚く行われていた障害児への性教育が一気に萎縮してしまった。特別支援学校での性教育は、もともと家庭での教育力の低下を補うために一貫して充実させてきた経緯があるだけに、学校教育が後退した分を家庭教育が埋め合わせられるのか疑問の声もあがっている。
(学校と家庭での教育の押し付け合いの一方で)学校教育への家庭の引込も本格化した。本年度より移行が始まった「新しい学習指導要領」の特別支援教育編を読むと、文中に「家庭」という言葉を84回、「連携」という言葉を47回使うなど、教科・道徳・「日常生活」科目全般で「家庭」を「学校教育」に巻き込んでいくことが教員と学校に課せられている。
家庭教育の今後10年の方向を定めた「教育振興基本計画」が21年3月に文部科学省Webペーシに掲載された、まさかその初年度に「学校教育」と「家庭教育」の責任と範疇の境が右や左に移動したりクロスオーバーしてゆく状況を、誰が予想しえたのだろうか。(さらに言えば、政権が代わって政策の見直しが教育分野全般に及ぶ来年度以降に、今後10年の家庭教育のあり方を方向づけるはずの「教育振興基本計画」がどうなるやら。)
