家庭教育の教員より(49): 赤沼 幸子 教授

「ひきこもり」を脱しつつある青年のこと


 先日自宅で長い間ひきこもっていた青年に会った。彼はエリートになることを目指していたので大学は卒業したのだが、人見知りする性格で団体生活が苦手だったので就職しなかったそうである。そして10年間もひきこもったのであるが、その間の記憶は「ない」と言うのである。いわゆる解離性健忘というものであろう。人はあまりにもつらい記憶を忘却することで心の健康を保つものだから。気がついたら、現代の若者宿ともいえる民間の自立支援施設にたどり着いていたので、自分のことを「タイムスリップして来た時間旅行者だ」と言っていた。


 ようやく親の家を離れて施設で生活を始め、同じようなひきこもり体験をした者同士で生活する中で彼は生きる喜びを感じるようになっていったのである。ごく当たり前の「同年代の人たちとおしゃべりすること」に、「一緒に食事すること」に。そして仲間に誘われて一緒に仕事をするまでになったのである。彼は「幸せはこのような普通の生活の中にある」と思えるようになったのである。


 ひきこもる青年が100万人以上いるといわれて社会問題になっている現在、「教育」の名の下に、子ども達から楽しい子ども時代を奪わないで欲しいと願わずにいられない。

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このページは、家庭教育が2010年4月29日 18:11に書いたブログ記事です。

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