イラク自衛隊の撤退決定
5月31日付けでイラクに派遣された自衛隊の活動についての報道がほとんどないことに疑問をもったことを記したが、6月20日小泉首相は、自衛隊の撤退を正式に表明した。早速撤退準備活動が開始され、本当によかったと思う。そこで、やはり気になったのは、2年半に及ぶ活動で何がなされたかということである。私は、朝日新聞しかみてないので、他の新聞がどのような記事を掲載しているか、わからないので、朝日の報道に限定して、感想を記しておこう。まず、20日の新聞には、撤退決定の1面の記事、3面には、首相が自分の任期内に決着をつけたがっていたこと、7面には、イタリアも撤退を表明したという記事があり、39面には、「2年半何が残った」という見出しの記事がある。疑問だった活動内容の詳報があるかと読み出して、がっかりした。自衛隊の活動について防衛庁は、267回の医療支援や道路や学校を復旧したといっているというだけで、後は国際医療NGOの医師の国際支援としての自衛隊派遣の弱さがあったというコメントだ。朝日新聞社は、イラクに記者を派遣していなかったのだろうか。同じ記事の後半には、「撤退時がもっとも危険」という見出しで、土居貴輝、川端俊一という署名入りの記事があるが、この記者たちは、サマワで自衛隊がどんな活動をしたのか、取材していなかったのだろうか。 翌21日には、1面に藤崎優朗の署名記事「イラク陸自撤収と日米同盟」が載った。しかし、ここでは派遣された自衛隊の活動にはまったく触れず、2年前の派遣をめぐる論争を繰り返し、アメリカべったりと非難するだけで、何の価値もない記事である。さらに、2面では、空自の活動の強化の記事があり、3面の社説では「結果オーライとはいかぬ」というタイトルで、一発の銃の発砲もなく、一人の犠牲者もなかったことにもケチをつけたいようである。なぜ素直に「良かった」と喜べないのだろうか。自衛隊の復興支援がイラクの再建に貢献したという「見方もある」と表現され、そうではなかったと言わんばかりであるが、しかし、その根拠は示されていない。それどころか「実態は、要塞のように守りを固めた宿営地の中で、給水活動をしたり、現地の人々を雇用して、給水活動をしたり、学校施設などを復旧したりすることが中心だった」と言っている。その実態をこれまで、どれだけ詳しく報道したのだろうか。そこには、朝日新聞の価値観による自衛隊活動の解釈だけで、実際の姿は浮かんでこない。結論は、結局派遣反対でしかない。
4面には、海外派遣の一般法制定の動きがあることが伝えられている。そして、37面には、「イラク派遣 評価は」という見出しの記事がある。やっと、活動の実態に基づいた評価が報道されているか、と期待をもってみたが、またも期待はずれである。昨年の総選挙で自民党に投票した10人へのアンケートが紹介されているだけである。それも朝日の身内であるアスパラクラブの会員へのアンケートであり、自衛隊のイラク派遣への関心はどうなったかというもので、派遣評価とはいえないものである。それでも、行くときと帰るときだけ騒ぐのは変だ。自衛隊がつくった学校や子どもの笑顔、途中経過を見たかったという筆者と同じ思いの人の意見もあった。傑作なのは、精神科医香山リカのコメントである。「自衛隊の活動内容が伝わってこないなかで、関心を維持し続けるのは大変なことだ」と言い、関心が増したり、変わらないが半数あることは、派遣の意義や正当性を疑問視し、監視し続けたいという人の意思を感じると言っている。この意思に答える役割を担っているのが、マスコミではないのか。しかし、香山の思考はそこへは向かわず、小泉首相のマジックに酔わされてしまったという。活動内容を報道しなかった朝日新聞の責任はどうなるのか。国民の知る権利に答えられない新聞は、存在価値がない。 自衛隊の活動の実際を知りたいという思いが、撤退の決定と重なって、またまた考えさせられた。自衛隊の海外派遣の是非を判断するためにも、その事実が知らされなければならない。自分のイデオロギーだけで、判断することは危険である。