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2007年8月 アーカイブ

2007年8月 2日

21【父の字義】

「父。矩也。家長率教者。从又挙杖。」
「父。矩(く)なり。家長の率いて教うる者なり。又(ゆう)に从(したが)いて杖(つえ)を挙ぐ。」(『説文解字』)

「父」の字は会意文字で、白川静の『字統』によると、「斧」の頭部の形(|)と、もともと手の形をあらわす「又」とを組み合わせた文字であるという。
「矩」は畳韻で「父」を訓じたもの(「ふ」と「く」の発音の「U」が共有されているということ)。「从又挙杖」は、手に杖を持っている形を表現したもの。斧といい、杖といい、共にある集団の長のもちものとしてその地位や身分をあらわすシンボル。
『説文解字(せつもんかいじ)』は、後漢の許慎(きょしん)が著した中国最古の漢字字書。

「父」とは、一家の長として家族の行動様式の模範・準拠であり、指導者・統率者であるということ。

2007年8月 6日

22【母の字義】

「母。牧也。从女象褱子形。一曰象乳子也。」
「母。牧(やしな)うなり。女に从(したが)い子を褱(いだ)く形に象(かたど)る。一に曰く、子に乳するに象るなり。」(『説文解字』)

「母」の字義に対する『説文解字』の説明である。「母」の字は、女性が子を胸に抱いて授乳する形を象った象形文字である、と。最近、母親の子どもへの愛情表現の第一歩として母乳を与えることがよく強調されているが、これをみると、「母」の字そのものが、母親が子を抱いて授乳する、母子一体化の模様を描写した文字として生まれてきたのが分かる。少し想像を働かせてみると、「母」の字には、『説文解字』が「牧」「乳」と説明しているように、やしなう、そだてる、いつくしむ、という母たるもののあり方の意味が込められているといえよう。

2007年8月 8日

23【親の字義】

今回は「親」の字義について。
『説文解字』には「至るなり。見に从(したが)い亲(しん)の声」とある。「親」字の左側の「亲」は、もともと文身のときに用いる「辛」(針、はり)と「木」を合わせたもので、辛(はり)を打ち込んで選んだ木という意味。すなわち新しく作った「神位」「位牌」をさす。そして、その位牌を拝する(見る)形が「親」である。これに基づいて白川静の『持統』は「親」が「おや」と解釈される事情を、「新しい位牌は父母のものであることが多いから、親は父母の意となるのであろう」と説明している。
 もっと注目すべきは、「親」を「至る」として解釈しているところである。清代の段玉裁(だんぎょくさい)による『説文解字注』はこれについて、「父母は情の最も至る者なり。故にこれを親と謂う」という説明を付加している。要するに、父母は子どもにとって真情を呼び起こす存在、最も身近で親しい存在だということである。「親」の字義には「おや」のほかに、「したしむ」「したしい」という意味もあるが、それは父母と子の間のそういう親密な一体感を形容する言葉として導き出されたものであろう。これと関連して儒教五倫の一つである「父子親有り」の有名な言葉があるが、これについては次の機会に譲ろう。

2007年8月13日

24【結婚(皆婚)制度】

「丈夫生而願為之有室、女子生而願為之有家、父母之心。人皆有之。」
「丈夫生まるればこれがために室(つま)有らんことを願い、女子生まるればこれがために家(おっと)有らんことを願う。父母の心にして、人皆これ有り。」(『孟子』藤文公下)

『孟子』にみえる一言である。家に男の子が生まれてくると、父母は、将来この子が結婚して妻を持つことを願い、女の子が生まれてくると、やはり将来結婚して夫と結ばれることを願う。これが世の中の子どもを持っているすべての父母の自然な心である、と。これを少し拡大していうと、人は男女おのおの伴侶に恵まれて結婚をする、すなわち〈結婚制度〉が人間にとってごく当たり前のことで普遍的であることを、父母の子供の将来への願望を借りて示唆しているもののように思われる。
近年、家族社会学の一角では、結婚は基本的に人だれにも開放されているという、いわゆる「皆婚制度」はせいぜい200年の浅い歴史しか持っていないもので、西洋の近代社会の成立とともに誕生し創られてきた神話・幻想にすぎない、という主張が行われている。具体的な議論は避けたいが、彼らの論理が依拠している西洋の家族風土はともかく、その主張ははたして我々の過去・現在・未来の家族現実(日本社会、東アジア社会)を充実に反映しているものなのかどうか、疑問を感じたので紹介してみた。

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