アメリカ図書館協会は、1939年に「図書館の権利宣言」を成立させて以来、「図書館の自由」に関しては神経を使い、気を配ってきています。1974年に『図書館の原則』(Intellectual Freedom Manual)初版を刊行してから、2006年の7版に至るまで継続的に刊行を続け、ALAの知的自由に関する基本的な方針文書や指針、決議などを歴史的経緯を付して紹介し、さらに現場の図書館員に有用な具体的な方策を紹介してきました。
21世紀に入り、インターネットやコンピュータ・ネットワークが普及するにつれ、図書館現場で知的自由に関する問題が生じてきたとのことです。そこで2006年のアメリカ図書館協会冬季大会で、図書館員、学生、ボランティア、住民を対象に、実務的、実践的でわかりやすい知的自由に関するシリーズを刊行することが発表されました。
大学図書館、学校図書館、公共図書館の3部作です。
2009年にまず、3部作の筆頭として『大学図書館での知的自由を擁護する:現場からのシナリオ』バーバラ・M.ジョーンズ著 川崎良孝、前川敦子、桑原千幸訳 京都図書館情報学研究会、日本図書館協会(発売)2010.5 が刊行され、本年5月に川崎京都大学教授が日本語訳を出されました。
内容は以下の通りです。
序文 21世紀のアメリカ高等教育
第1章 21世紀の大学図書館と知的自由
第2章 蔵書構成
第3章 インターネット・アクセス
第4章 図書館の展示スペース、プログラム、集会室:アゴラとしての大学図書館
第5章 プライバシーと秘密性
川崎教授が、「訳者あとがき」で著者の強調したことを以下のように紹介されていますので、それをここで紹介しておきます。
1.図書館サービス、施設利用、機器利用などあらゆる場面で、的確な方針文書を作成し、それを管理者が認めることが重要である。
2.図書館の方針を大学の使命、目的、理念に統合しなくてはならない。
3.図書館員は図書館員仲間(だけ)で話していてはならず、教員、管理者、州議員、住民などに積極的に図書館の役割を説得できなくてはいけない。
4.図書館員は大学の執行部や重要な委員会などに積極的に参画しなければならない。
5.これまでの図書館員は予算獲得と言った「競争」に積極的ではなかったが、これからは積極的、政治的に動く必要がある。
6.知的自由の概念は拡大しており、経済力や障害者など幅広く含むようになってきている。
7.情報リテラシー教育は、図書館員が教育課程にかかわるという点で重要である。
8.国際的な知的自由と最も関係するのは大学図書館である。
3部作の第2弾である、『学校図書館で知的自由を擁護する:現場からのシナリオ』(Protecting intellectual freedom in your school library)も2009年に刊行されています。本書は、京都大学大学院での2010年前期での教科書となっているとのことですから、早ければ今年度中に日本語訳を読めるのではと期待しています。
公共図書館の本は、今年刊行の予定ですが、まだ手元には届いていません。
