学長情報シリーズ32・年頭の所感
明けましておめでとうございます。日本も世界も厳しい年明けとなりました。
新年に当たり、一言、年頭の所感を申し上げます。
歴史上では、今と比べようもないほど大変な時があったに違いありません。困難を克服していくためには、そのような歴史を繙き、その時々の困難を克服した人達の考え方や行動の仕方を学ぶ必要があるといわれます。
最近は、深刻な経済危機に対処するため、江戸時代から言われ、実践されてきた経済と道徳の調和が、企業等で注目されるようになりました。アメリカでも、だいぶ前から、経済学者の間で言われるようになっていたようです。
物的資源の乏しい日本では、昔からそのことが言われてきたのですが、第2次大戦後になると、道徳に対するアレルギー反応のようなものがあって、経済と道徳の調和といってもなかなか国民に受け入れられなくなりました。
そこで、われわれは、道徳を人間的価値にまで広げ、これからの日本では人間的価値と経済的価値の調和を保つようにすべきだと主張してきました。そのことは、平成16年の中央教育審議会生涯学習分科会「今後の生涯学習の振興方策について」(審議経過の報告)、平成20年の中央教育審議会答申「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について―知の循環型社会の構築を目指して―」に入っています。
しかし、これは理念です。したがって、それを具現化するためには、具現化の方法を示すガイドラインが必要です。それがないと、危機を脱する方策にはなりません。
では、そのガイドラインを作るカギはどこにあるかといえば、実は「人間的価値」と「経済的価値」の関係にあります。両者の関係を明らかにし、問題を解決するためにはどのように関係を組み換えていけばよいかを明らかにすれば、それを日常生活に行かすことが出来ます。それを示すのがガイドラインです。
ところが、カッシーラーが言うように、関係は、アリストテレスの形而上学で本体概念に対して従属的な地位を与えられてしまったために、あまり関心が寄せられず、研究が大きく立ち遅れてしまいました。(Ernst Cassirer,Substanzbegriff und Funktionsbegriff,1910 、山本義隆訳『実体概念と関数概念』1979、みすず書房、を参照。)
しかし、ようやく関係の組換えを行うための関係計算も出来るようになりました。(関係計算法については、仕事移動診断総論の教材にアップしてあります。) したがって、われわれの緊急の課題は、答申等でいわれている人間的価値と経済的価値の調和を具現化するためのガイドラインを作ることです。
これからの日本では、そのような「人間的価値」と「経済的価値」の調和の学習と実践をはじめ、国民一人一人が生涯にわたって人間力をアップし、困難の克服に立ち向かっていく必要があります。
日本にとっては、国民の人間力こそがかけがえのない資源ですが、人間力は学習によって向上します。その学習を支援するのが、生涯学習支援者です。
このように深刻な事態の時に、大学で勉強などしていられるかと言われるかもしれませんが、急がば回れです。しっかり勉強して力をつけ、人々の人間力アップを支援する専門家となって、日本が直面する困難の克服に貢献していきたいものです。